乳がん確定前のムネのうち〜ちょ、まてよ!?〜

会社の検診の結果、【乳がんの疑いあり】で専門の病院を紹介をしてもらったものの、初診の予約がとれたのは数週間先だった。診察を待っている間に一体何度検索したのかわからない単語がある。

「乳がん」
「石灰化」
「カテゴリー4」

Google先生によりヒットするものの、 正直自分には全くピンとこなかった。繰り返すが、何も自覚症状がないからだ。ただ、検索の結果わかったことで良かったこと、そうでないことがある。良いことは、初期の乳がんの場合は比較的予後がいいということ。勿論、それが自分に当てはまるかはわからないけれど、多少の安心材料にはなった。

悪いことは、病気である可能性を分類する【カテゴリー4】は、悪性である可能性が4割程度と決して低い確率の分類ではないということ。むしろ高い。癌の疑いあり、という言葉はそれなりにインパクトがあって、仕事でも普段はしないようなミスを連発してしまった。ポンコツなのはもともとだけれど、なかなか眠れないからだろう。

「いちこさんがミスなんて珍しいね、体調大丈夫?」

そう声をかけてきたのは直属の上司。
アラフィフ男性・食いしん坊でちょっと面倒くさいところもあるけれど、付き合いも長く基本的には良い人だ。ちなみに三越伊勢丹の地下が大好きな人でもある。伊勢丹でスーツをオーダーする人でもあった。今は廃止されたホワイトデーのお返しも彼からは勿論伊勢丹。ちなみに私の勤務先は伊勢丹とは無関係だ。そのうち伊勢丹のショッパー柄のタータンチェックのスーツでも作りそうな勢いで上司は伊勢丹を愛している。彼のことはアイカード上司と呼ぶことにする。

そして同じく食いしん坊友の会の仲間でもある。ああ、それは高島屋だったっけ。勤務先は高島屋とも関係がない。

私は今自分が置かれている状況について、上司に伝えるかどうか少し悩む。今回の結果が確定してからでいいのではないか。これから何度も通院しないといけない。それでも、まだ今は。

「すみません、気をつけます」

私がそう謝罪をするとアイカード伊勢丹食いしん坊上司は頷きつつ、席に戻って行った。注意力散漫でミスが増えているのだから少し早く出社して、見直しにかける時間を増やそう。何より今夜は早く横になろう。

そう考えていると、視界の端に、こちらを心配そうに眺めている伊勢丹大好きアイカード・食いしん坊友の会、まとめるとI♡伊勢丹上司の姿をとらえた。

ごめんなさい、今はまだ、私自身考えたくないんです。

心のなかで、そう謝罪をしながら目の前に置かれている資料に手を延ばした。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

コメント

コメントする

目次